Paul Nurse博士との国際共同研究
久米 一規
2018年の1月から、日本学術振興会「国際的な活躍が期待できる研究者の育成事業」の支援のもと、英国ロンドンにあるフランシス・クリック研究所(ヨーロッパ最大の研究所)のPaul Nurse博士(フランシス・クリック研究所 所長、2001年ノーベル医学・生理学賞受賞)の研究室に客員研究員として受け入れていただき、国際共同研究に取り組んでいます。2020年3月までの間に、短期間(約2ヶ月以上)で複数回(3-4回程度)を予定しています。これまでに、2018年1月から3月、2018年12月から2019年3月と短期留学させていただきました(2019年は6月と12月を予定)。
Nurse博士の研究室にて、私は分裂酵母を用い細胞核のサイズ制御機構に関する研究を行っています。私たちヒトを含むほとんどの真核細胞には、細胞核(以下、核)が1つ存在します。核は、生命の設計図である遺伝情報を収納し、保護する重要な機能を担っています。私たちが注目しているのは、生物種によって大きさの異なる細胞において、それぞれの細胞が持つ適切な核サイズがどのようにして決定され、制御されているのか?核サイズ制御が細胞の機能にもたらす役割とは何か?という点です。核サイズの研究が最初に報告されたのは、約1世紀前になりますが、未だ解明されていない興味深い研究課題です。また、がん細胞や老化した細胞では、細胞核の肥大化や形態異常がみられることが報告されており(その詳細は未だ不明)、重要な研究課題の1つでもあります。
Nurse博士との国際共同研究を開始したのは、今回の派遣からではなく、2012年にさかのぼります。日本学術振興会の海外特別研究員制度の支援をいただき、2012年から2年間、英国癌研究所(現在のフランシス・クリック研究所)のNurse博士(当時、Nurse博士は英国王立協会会長を兼任)の研究室に留学しました。その際取り組んだのが、核サイズの研究です。2014年に帰国後もNurse博士との国際共同研究に継続して取り組んでおり、Nurse博士の研究室が毎年行っているラボリトリートに参加させて勉強させてもらっています。
今回は、Nurse博士との国際共同研究について簡単に紹介させていただきました。最後に、国際共同研究の機会を与えていただいている本プログラムに感謝するとともに、短期留学にご理解、サポートをいただいている登田先生、水沼先生、河本先生、千原先生をはじめ、広島大学大学院統合生命科学研究科の先生方に深く感謝申し上げます。