海外派遣若手研究者のつぶやき 藤村孝志特任助教(ボストン小児病院)「若いうちに海外留学を」を公開いたしました

若いうちに海外留学を

特任助教 藤村孝志

 

 今年のボストンは、「やっと冬が終わり花が咲き始めた」と思ったら花冷えする雨の日が続き、春の訪れが遅い印象です。最近やっと暑い日が増えてきましたが、まだ風が冷たいです。春の訪れは遅かったですが、私の派遣先であるボストン小児病院は、開闢150周年を迎え盛り上がっています(https://bch150.childrenshospital.org/)。

 ハーバード大学医学部では、授業期間中毎週の様に他大学の研究者による招聘セミナーが開かれます。日本では多くの場合、大学や研究機関においても招聘研究者によるセミナー時には会場が埋まらない状況が多いですが、流石ハーバード、そんなことはありません。会場は毎回超満員となります。「研究者・医者・学生さんのサイエンスに対するやる気が違うな」といつも感銘を受けます。

開演10分前のセミナー会場の様子 写真に写っているのは会場の半分~1/3位

 さて、私が現在研究を行っている建物は、ボストン小児病院と通りを挟んだ向かいの建物です。日々の研究活動の中で、東アジア系、西アジア系と思われる多くのポスドク・留学生を見かけます。一番多く見かけるのは中国・台湾などの東アジア系の人たちで、次が西アジア系の人たちの印象です。実際、私が着任した折(2018年2月)に行われたオリエンテーションでは、新外国人スタッフ(MDおよびPhD)6人のうち、日本出身が私1人、中国および台湾出身が4人、スイス出身が1人と東アジアからの留学生が圧倒的に多かったです。最近の中国・台湾地域の経済的発展と科学振興政策を考えると頷けるとともに、日本の科学界で問題視されているように「海外(研究)留学する日本人が減っている」という現状を肌で感じました。

 日本以外の国からの留学生は若い人が多い印象を受けます。研究室のポスドクおよび技術補助員さん達の年齢層が20代から30代中盤であるのを考えると、やはり若いうちに留学した方が、他のスタッフとも話をしやすいし、それに伴って英語のスキルも上がりやすいので、「留学するならやはり若いうちの方が良かったな」と思うに至りました。私のように40歳過ぎてから(特に人数の少ないラボに)研究留学すると、ただでさえ加齢により英語に対する親和性・柔軟性が下がっているところに、若い人とコミュニケーションする機会も減るので、なかなか英語が上達しにくい気がします。英語以外でも日本とアメリカの生活習慣や食文化の違いによる健康不安も生じやすくなるので、やはり留学するなら健康で柔軟性・感受性の高い若いうちが良いですね。「日本でできるだけ英語レベルを上げてから…」と言うのも心情ですが、日本ではなかなかリスニング能力は強化できませんし、現地で英語漬けになった方が上達も早いと思います。更に、特に基礎研究の分野では「ポストを維持してから」留学を希望する人が多いですが、現状なかなかそのチャンスを得るのは狭き門かと思います。年齢が進んだ後に、留学先から(ある程度のポジションの)ポストを日本で探すのは、情報も入りにくくなかなか難しい印象です。若い内、ポスドクや助教への応募であればインターネットを介した面接手段もありますが、ある程度以上のポジションになると講演や模擬授業を求められるケースも多いので、その為に毎回帰国するわけにもいかず現実問題としてなかなか対応が難しいと思います。

 以上の観点から、もしあなたがまだ若くて「いつか留学したい」、「将来アカデミアで生きていこう」と考えているのであれば、健康でかつ将来の可能性の幅広い「若いうち」に思い切って海外留学されることをお勧めします。